日本の天然温泉には旧泉質分類で11種類があるとされますが、鳴子温泉郷ではそのうち8種類を楽しむことができ、まさに「泉質の宝庫」といえます。湯色も白濁、緑白、青色、茶褐色、黒色、無色と変化に富み、天候や気温によって日ごとに違った表情を見せます。
鳴子温泉郷の歴史
古代には「玉造湯(たまつくりのゆ)」と呼ばれ、江戸時代には仙台藩領の名湯として「仙台鳴子の湯」と称されました。江戸期には湯治文化が盛んで、農閑期に訪れる農民や漁民の憩いの場として親しまれました。
また、明治以降は東北大学温泉医学研究所や国立鳴子病院が開設され、温泉医療の拠点として発展。温泉地としての機能だけでなく、医療・保養の場としても高く評価されています。
各温泉地の特徴
鳴子温泉
鳴子温泉は温泉郷の中心地であり、最も多くの宿泊施設が集まるエリアです。奥州三名湯の一つとして名高く、泉質は塩化物泉、硫黄泉、酸性泉など多彩。温泉街には足湯や手湯があり、「下駄も鳴子」というキャッチフレーズのもと、下駄で街歩きを楽しむことができます。
共同浴場の滝の湯は、温泉神社の御神湯として古くから利用されてきた名湯。木造の浴槽に滝のように源泉が注ぎ込まれる情緒ある風情が魅力です。
東鳴子温泉
落ち着いた雰囲気と静けさが魅力の温泉地で、古くから湯治客に親しまれてきました。泉質はナトリウム-塩化物泉や炭酸水素塩泉などで、体を芯から温め、肌を滑らかに整える効果があります。
川渡温泉
温泉郷の中で最も古い歴史を持ち、静かで心安らぐ町並みが広がります。炭酸水素塩泉が中心で、美肌効果や疲労回復に優れた湯として知られています。
中山平温泉
別名「美人の湯」「ウナギの湯」と呼ばれるほど、とろみのある肌触りの温泉が特徴。泉質はアルカリ性単純泉で、肌をしっとり滑らかにします。特に女性客から人気の高い温泉地です。
鬼首温泉
間欠泉が有名で、自然豊かな高原リゾートエリアとしても人気です。冬はオニコウベスキー場でウィンタースポーツを楽しみ、その後に温泉で疲れを癒すという贅沢な過ごし方も可能です。
泉質と地質
鳴子温泉郷では、以下の泉質が楽しめます。
- 塩化物泉
- 炭酸水素塩泉
- 硫酸塩泉
- 含鉄泉
- 酸性泉
- 硫黄泉
- 単純温泉
地質は花崗岩を基盤とし、その上に凝灰岩層や火山噴出物が重なっています。源泉は火口跡や荒雄川沿いに湧き出し、場所によって泉温やpH、成分が異なります。この多様な地質条件が、鳴子温泉郷の泉質の豊かさを生み出しています。
温泉街の見どころ
街歩きと足湯
駅前から温泉街にかけては、こけしをモチーフにしたポストや電話ボックスなど、ユニークなスポットが点在します。下駄を履いて散策することで、昔ながらの湯治場の雰囲気を味わえます。
名産品
- 栗だんご:栗を丸ごと包んだ団子に醤油ダレを絡めた名物。
- しそ巻き:味噌餡を紫蘇の葉で包んで揚げた郷土料理。
- 菊なめこ:菊花となめこを漬け込んだ珍味。
- 鳴子漆器:木地塗やふき漆塗の器が有名。
- 鳴子こけし:首を回すと音が鳴る伝統工芸品。
鳴子こけしの魅力
鳴子こけしは中太の胴に菊の模様が描かれ、首を回すと「キュッ」と音が鳴るのが特徴。職人の手によって一本一本作られ、今も温泉街のシンボルとして愛されています。
周辺観光スポット
- 鳴子峡:紅葉の名所として全国的に有名。
- 潟沼:日本有数の酸性湖で、鮮やかなエメラルドグリーンが印象的。
- 尿前の関:奥の細道ゆかりの関所跡。
- 鳴子ダム:季節ごとに表情を変える絶景ポイント。
まとめ
鳴子温泉郷は、歴史、泉質、風景、文化、食のすべてが揃った温泉地です。400本もの源泉と8種類の泉質を誇り、湯めぐりの楽しみは尽きません。訪れるたびに異なる魅力を発見できる、まさに温泉の宝庫といえるでしょう。