宮城県北東部の港町・気仙沼は、日本国内で取引されるフカヒレの実に90%を担う一大産地です。その背景には、豊かな漁場、長年培われた加工技術、そして地元の人々の情熱があります。フカヒレは中華料理の高級食材として知られますが、近年では和洋中さまざまな料理に活用され、観光とグルメの両面で気仙沼を代表する特産品となっています。
「フカ」とは関西地方でのサメ類の呼び名で、関東では特に大型のサメを指します。その尾びれや背びれ部分を乾燥させたものがフカヒレで、中華料理では「魚翅(ユイチー)」と呼ばれています。中国では明の時代から食べられており、スープや点心、姿煮など、特別な席を彩る高級食材として重宝されてきました。
気仙沼港は、日本一のサメの水揚げ量を誇ります。その多くはマグロ延縄漁業の際に偶然捕獲されるサメであり、この副産物として得られるヒレを高度な技術で加工しているのが特徴です。乾燥や下処理には手間と時間がかかりますが、その丹念な作業によって、世界的にも高い評価を受けるフカヒレが生み出されています。
気仙沼の寿司店や料理店で人気なのが「気仙沼ふかひれ丼」です。特大のフカヒレを贅沢にのせた丼は、都内では1万円以上するサイズが、気仙沼では半額程度で味わえるお値打ちグルメです。セットの汁物にはサメ肉や軟骨を使った団子が入っており、「サメを余すことなく使う」という地元ならではのこだわりが込められています。
フカヒレを使った寿司も魅力的です。特に「ふかひれ姿握り」は、薄めの味付けでフカヒレの旨みを生かし、ユズ塩の香りが爽やかさを引き立てます。とろけるような食感と上品な味わいは、ここでしか味わえない逸品です。
乾燥フカヒレの製造は、生のヒレを茹でて表面の鮫肌を取り除き、油脂分を落として天日干しにします。調理時にはさらにネギやショウガと茹で、蒸して皮を剥き、水にさらすことで臭みを取り除きます。フカヒレ自体は無味に近いため、スープやあんかけなどで旨みを加えて楽しみます。
近年、フカヒレ漁の一部で行われるシャークフィニング(ヒレだけ切り取って海に戻す手法)が動物愛護の観点から問題視されています。この漁法はサメを死に至らせることが多く、世界のサメ種の70%以上が絶滅危惧種とされています。気仙沼では副産物利用を基本とし、資源管理を考慮した持続可能な漁業を目指す取り組みが進められています。
気仙沼では、港町ならではの新鮮なフカヒレ料理が楽しめるほか、加工工場の見学や料理体験イベントも開催されています。また、お土産用のフカヒレスープやレトルト姿煮も豊富に揃っており、観光客に人気です。
ここで味わえるフカヒレは、単なる高級食材ではなく、漁業の歴史、地域の技術、そして持続可能性への挑戦を象徴しています。グルメを通じて地域文化を知る旅は、きっと忘れられない思い出となるでしょう。