仙台の名物料理としての地位を高めつつある「牛タン」。肉厚で弾力がありながら、それでいてさっくりと噛み切れるほど心地よい食感。そして舌に広がるジューシーな味わいがたまらなく美味しい。原料の柔らかい箇所だけを使用した極上の牛タンを楽しみたい。
仙台の代表的なグルメとして知られる牛たん焼きは、意外にも昭和初期に生まれたものでした。
仕込みに秘密があり、塩をふって数日寝かせることで、やわらかく厚切りの牛たんが誕生しました。
現在は仙台市内に30を越える専門店があり、各店こだわりの牛たん焼きを楽しむことができます。
仙台の牛たん焼きの歴史は昭和23年にさかのぼります。当時焼き鳥店を営んでいた佐野啓四郎さんが洋食店で食べたタンシチューのおいしさに感動し、「自分の店で牛たんを使いたい」と考案したのが始まりです。牛たんは塩をふって数日寝かせることで、厚切りでもやわらかく仕上がります。
仙台の牛たん焼き専門店の一つである「仙臺牛たん 貴」では、オーストラリア産の牛たんのみを使用しており、牧場まで指定して素材の良さを追求しています。強火の炭火で一気に焼き上げることで余分な脂が落ち、たんのうまみをギュッと閉じ込めます。
牛たん焼き定食には、牛たん焼きに漬け物と味噌南蛮が添えられ、麦飯とテールスープのセットが付きます。牛たんはサクッとした歯ざわりでやわらかく、塩加減とジューシーな肉のうまみに箸が止まりません。店主のおすすめは、牛たんにおみ漬けをのせて食べることで絶妙な塩気を楽しめます。
テールスープは牛テールをじっくり炊き込んだもので、塩味のシンプルさからは想像できないほど滋味深い味わいです。麦飯をスープにダイブさせる食べ方もおすすめで、雑炊のように変身したテールスープはまた違ったおいしさを楽しめます。
牛たん専門店ならではのサイドメニューも見逃せません。たんの辛みは牛たんを細かく裂いて甘辛く味付けしたもので、ピリリとした辛さが食欲をそそります。麦飯のお供としても、酒肴としても合う一品です。
また、薄くスライスした牛テールを炭火で焼いた牛テール焼きは脂がのったテール肉にニンニクの香りが効いたパワフルな味わいです。焼きたてを豪快に手でつかんでいただきます。
テールスープは火加減を大切にしながら8時間かけて炊き上げられ、牛たんの仕込みは肉の状態をチェックしながら寝かせる時間を調整するなど、丁寧な仕事が毎日続けられています。