境内の立地と雰囲気
賀茂神社は泉中央地区の西方、七北田川(冠川)の蛇行に沿うように位置しています。周囲は七北田丘陵と川に挟まれた河岸段丘で、緑豊かな環境に包まれています。社殿は南東向きに鎮座し、伝統的な茅葺箱棟造(かやぶきはこむねづくり)の様式を今に伝えています。
境内には、八咫烏(やたがらす)を祀る八咫烏神社も併設されており、参拝者は賀茂信仰と共に八咫烏の神徳にも触れることができます。境内や周囲には巨木・古木が多く、仙台市の「杜の都・仙台 令和版 わがまち緑の名所100選」にも選ばれています。
下賀茂神社と上賀茂神社
下賀茂神社(賀茂御祖神社)
下賀茂神社の祭神は鴨建角身命(かもたけつねみのみこと)と多々須玉依姫(ただすたまよりひめ)の二柱で、地元では「東の宮」と呼ばれます。縁結びや安産、交通安全などのご利益があるとされています。
上賀茂神社(賀茂別雷神社)
上賀茂神社の祭神は別雷命(わけいかづちのみこと)で、地元では「西の宮」と呼ばれます。雷の神様として厄除け、農作物の豊穣、災難除けの信仰を集めています。
賀茂神社の由緒と歴史
賀茂神社の起源は、鹽竈神社の神職が自邸内に祀った「只洲宮(ただすのみや)」と「貴船宮」にさかのぼります。
1607年(慶長12年)、只洲宮は鹽竈神社の境内に遷されました。その後、仙台藩3代藩主・伊達綱宗、4代藩主・伊達綱村の時代に修造・遷宮が行われ、1696年(元禄9年)、古内志摩義如の屋敷跡である現在地に下賀茂神社として移されました。同時に上賀茂神社と八咫烏神社も勧請され、現在の社の姿が整いました。
古内氏と賀茂神社
賀茂神社の所在地は、仙台藩家臣・古内氏の旧領地です。特に古内志摩義如は、伊達綱村の時代に国老(家老)を務め、寛文事件に巻き込まれた際、唯一生き残った人物として知られます。彼の屋敷跡に神社が建てられたことは、この地の歴史を語る重要な要素です。
祭礼と年間行事
賀茂神社では年間を通じて様々な神事・祭礼が行われます。中でも有名なのがどんと祭で、毎年1月14日に行われ、約3万人が参拝に訪れます。裸参りの勇壮な姿も見どころです。
- 歳旦祭(1月1日)—新年を寿ぎ、一年の安泰を祈願。
- どんと祭(1月14日)—古札や正月飾りを焚き上げる行事。裸参りあり。
- 春季例祭(4月29日)—五穀豊穣と地域繁栄を祈願。
- 夏越大祓式(7月31日)—半年間の罪や穢れを祓う神事。
- 秋季例祭(10月7日)—収穫の感謝祭。
- 七五三祝祭(11月)—子どもの健やかな成長を祝う。
文化財と自然遺産
有形文化財
宮城県指定有形文化財として、下賀茂神社・上賀茂神社の本殿二棟が1964年に指定されています。いずれも茅葺箱棟造で、江戸時代の神社建築の特徴をよく伝えています。
天然記念物
境内には樹齢数百年とされるイロハモミジ2本、タラヨウ1本、アラカシ2本があり、宮城県や仙台市の天然記念物に指定されています。紅葉や新緑の季節は特に美しく、訪れる人を魅了します。
アクセス
公共交通機関
仙台市地下鉄南北線「八乙女駅」から宮城交通バスで「賀茂神社」バス停下車、徒歩約1分。
車
東北自動車道・泉PAスマートICから県道35号を経由し、県道264号へ。東北自動車道を跨ぐ陸橋を越え、信号を東進してすぐ。
周辺観光と見どころ
神社南側の七北田丘陵には中世の城跡「長命館」があり、歴史散策におすすめです。また、門前には臨済宗の盛徳山慈眼寺があり、古内志摩義如の母を葬るために建立された由緒を持ちます。七北田川沿いの道を歩けば、かつての主要道の面影も感じられます。
まとめ
賀茂神社は、京都の賀茂社ゆかりの信仰、仙台藩ゆかりの歴史、美しい自然が融合した魅力的な神社です。歴史好きの方はもちろん、四季折々の景観や地域の伝統文化に触れたい方にもおすすめのスポットです。静寂と荘厳さに包まれた境内で、心静かに参拝のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。